▲(株)しまむらの社員は、2〜3年ごとに高速配転。店長の次はバイヤーになることも
日本の企業の多くは、さまざまな部署に分かれています。ですから、入社前にあらかじめ本人の希望や出身学部により職種が指定され、入社後は、適性や実績を判断されながら、その職種でのエキスパートが養成されていくことが一般的です。
しかし、株式会社しまむらは、そういった他の企業とは人材育成の手法が少し異なっています。というのは、株式会社しまむらでは、入社すると、所属部署に割り振られることは同じですが、その部署で骨をうずめるというのではなく、約2〜3年ごとに配置転換が行われるのです。
たとえば、新卒後に紳士服担当のコントローラーに配置された人材が3年後に地方店舗の店長になり、2年後にバイヤーとして買い付けを行うといった具合にです。
一見すると、その道のエキスパートを各部署で育成するほうが効率よく人材配置をできるようにも映ります。しかし、株式会社しまむらでは、敢えてそういった人材育成の方法をとらず、高速配転させることをモットーとしています。
なぜそのような高速配転を株式会社しまむらがモットーにしているのかは明確には分かりません。ただ、以前 株式会しまむらの社員に聞いてみたところ、数年ごとの配置転換がまた楽しく、それも株式会社しまむらの魅力だと答えてくれました。
人材を高速配転することで、株式会社しまむらは、社員ひとりひとりのやる気を高め、それも大きく成長してきた要因のひとつだといえるかもしれません。
なお、そこまでの短期間で高速配転すれば、社員たちは配置転換ごとに仕事を覚えるのが大変で失敗のリスクをはらんでいるようにも思うのですが、その点、ファッションセンターしまむらの場合、カバーできるのでしょう。
▲高速配転のしまむらの社員たちを支えるのは、パートたち
というのは、しまむらは、スタッフ全体の80%以上がパートという独特の人材構成をとっているからです。ファッションセンタ−しまむらのパートの多くは主婦です。彼女たちは、日頃から衣類に親しんでおり、いわば、買い物と販売のプロです。それだけに、例えば、婦人服の知識が乏しい新卒社員が店長としてやってきたとしても、わが子を育てるように彼女たちがその店長を支える土壌が出来上がっているのです。
また、しまむらにの社員たちには1000ページにおよぶマニュアルが配布されています。そこには、それぞれのポジションでいかにして短時間で効率よく仕事を身につけられるかノウハウが整理してまとめられています。そのマニュアルで学ぶことで、しまむらの社員たちは新しいポジションに置かれても短期間で仕事に対応できるようになるようです。
株式会社しまむらには、それぞれが会社を運営できるジェネラリストを育てようという考え方があるのでしょう。販売もできて営業できて、買い付けもできて、教育もできて・・そんな、幅広いスキルと広い視野を持つ社員を、株式会社しまむらは育成しているのです。それは、ある意味、従来のスタンダードな企業運営のスタイルからすると異端にも映るかもしれません。
しかし、現代のビジネスの社会は、とても流動的です。安泰と思われている大手企業がいきなり倒産したり、名もない小さな企業が急激に伸びてくるなど日常茶飯事です。そんな時代だからこそ、未来を切り開いていくためには、全体を俯瞰できるスキルとノウハウを身につけた人材が必要なのかもしれません。
グローバル化が進む昨今、現代におけるビジネスの社会では、自分の得意分野だけに精通していればよいという発想だけでは、いざとなったとき行き詰ってしまうことも多々でてくることでしょう。そのようなとき、社員それぞれが経営者的な視点で、会社全体を俯瞰できていれば、会社の未来は明るいといえるでしょう。いざとなっても、それぞれが解決策を導ける確率が高くなるからです。
そういったことを考えたとき、株式会社しまむらの人材育成の手法は、決して異端ではなく、新時代を生き残っていくための堅実な人材育成の仕方だといえるような気がします。

