▲ファッションセンターしまむらの店舗数は1000店舗以上。全国47都道府県を制覇
デフレでアパレル業界が軒並み不況だといわれる昨今、ファッションセンターしまむらがここまで躍進できた理由は、独自に開発した「コンピューターシステム」をなくして語れません。
ファッションセンターしまむらの本部はコントローラー制とよばれるコンピュータシステムによって運営されています。しまむらの本部は、全国にあるしまむらの店舗と、コンピューターによるオンラインで結ばれています そして、コンピューター主導によって、発注から在庫管理までが行われているのです。
ファッションセンターしまむらがコンピューターに注目したのは、今から40年近く前、1970年代のことでした。当時、最先端の通信機器といえばFAXでしたが、しまむらは、次世代に普及するであろうコンピューターを経営に活用することにいち早く目をつけていました。昭和50年のこと、藤原会長を中心に、しまむらは、データ処理を効率よく行うためにパソコンを導入。以後、ファッションセンタ−しまむらの総店舗数が30店舗を超えたあたりで、全店舗をコンピューターによるオンラインで結ぶことを試みました。そして、ファッションセンターしまむらの総店舗数が50店舗を数えた昭和59年には、本社の近くの埼玉県内に物流センターを建設して、商品の移動から在庫管理などを行うコンピューターシステムを構築しました。
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▲(地図)しまむらの本社はさいたま市にある。もとは小さな呉服店から全国展開が始まった。
そのときのコンピューターシステムは、進化しながら現在に至り、ファッションセンターしまむらの運営を支えているわけです。例えば、商品の発注も本部のコンピューターが自動的に行っています。しまむらの商品は、それぞれ商品ごとに販売する期間がコンピューターによって細かく設定されるのですが、しまむらのコンピューターは、それを売り切るための移動や発注も自動で行っています。商品を売り切るために、しまむらのコンピューターは全国の店舗における在庫状況を解析。ある店舗で売れ残りそうな商品があると、売れそうな店舗に移動するようコンピューターが自動的に判断します。
一方、しまむらのコンピューターは、各店舗の売れ行きや適正な在庫数もデーター管理しています。そして、それらを考慮したうえで、新商品の振り分けについても、コンピューターが解析し発注数を自動算出します。そこでは、各店舗のターゲットとなる年齢層や性別なども解析の要素となってきます。
このように、しまむらの躍進の理由のひとつには、「コンピューターシステムの構築」がありました。しかもそのコンピューターに任せる比率がとても大きいという特徴がありました。実際のところ、このように商品の発注や在庫管理までコンピューター主導で行っている企業はとても珍しいと思います。
アパレル関係の企業の多くは、それらの作業を人間が行っていることが多いと聞きます。特に老舗とよばれる企業では、長年勤めたいわゆるベテランが、蓄積された経験から勘で発注数などを決めていることも少なくないといいます。それはそれでとても良いことかもしれません。しかし、ファッションセンターしまむらは、そういった人間が本来行うような作業を、敢えてコンピューターに任せる方法をとっています。もちろんリスクはあるでしょうが、総合的にみると、人間よりも高い精度で在庫コントロールをできる上に、人件費を抑えることもできるといいます。
ただ、しまむらも、すべてをコンピューター任せというわけではありません。コンピューターが誤作動をしないよう人間が徹底管理を行っていますし、店舗展開の方針をはじめ、重要な事柄については、むしろコンピューターに頼らず、人間の能力を最重視しているのです。