ユニクロのように自社開発の新商品を売り出すわけでもなく、派手なTVCMなどもしない。また、しまむらの店舗の多くは、都市部から離れた郊外ばかりに立っているわけで・・一見すると、ファッションセンターしまむらは、至って地味な存在だといわざるを得ないのです。
▲全国に1300店舗を超えるファッションセンターしまむら
しかし、ファッションセンターしまむらほど、独自のアイデアと工夫にあふれたアパレル専門店は他にないといっても過言ではありません。独自の工夫といえば、そのひとつにファッションセンターしまむらは「問屋に一切頼らない」という画期的な工夫を具現化したということが挙げられます。
日本の衣類専門店の多くは、日本の伝統的な文化を受継ぎ、問屋を介した商売をしています。問屋は、さまざまなメーカーに出入りしていて、情報量が豊富で目利きもあるため、商品を仕入れの交渉から物流まで世話をしてくれることで、販売業者から重宝されています。
問屋は確かに便利な存在で業務の効率化を促してくれるわけです。しかし、そこには経費がかかります。そこにファッションセンターしまむらは、目をつけました。仮に問屋を介さず商売をできたら、問屋に支払う経費をカットでき、商品をより安く消費者に提供できるのではないか?と考えたのです。
それは、当時の日本社会においては、まさしく非常識な発想でした。問屋を介さないとなると、商品を仕入れるうえで最も難しい「目利き」や「交渉」のノウハウも身につける必要があるからでした。そういったことは長年の経験や知識の蓄積が必要であり、初心者が手を出すのは不可能であると考えられていたのです。
▲ファッションセンターしまむらは、婦人服、紳士服、布団カバー(ふとんカバー)、子供服ほか品揃え豊富
しかしファッションセンターしまむらは、その非常識ともいえる発想を見事に具現化してしまったのです。問屋の持つ情報を研究し、独自のマニュアルをつくって社内でバイヤーを育てあげたのです。さらに、「商品買取システム」と呼ばれる、売れ残ってもメーカーに一切返品しないという決め事を交わしたのでした。これはまた非常識といえる発想でした。なぜなら、しまむらにとって売れ残った在庫を抱えるというのはリスクでしかないからです。
一方、メーカーにとってそれ以上の好条件はないわけで、結果的にファッションセンターしまむらのバイヤーたちはメーカーから好待遇で、品質の良い商品を安く仕入れることにこぎつけることができたのでした。ちなみに、現在、ファッションセンターしまむらの取引先は500を越えるといわれ、しまむらのバイヤーたちは各メーカーの在庫を日々研究し、売れる商品を見極められるよう努力を重ねているといいます。しかも、しまむらが扱う商品は婦人服だけではなく、紳士服、靴、ふとんカバー(布団カバー)、肌着、ベビー用品など多岐に渡るだけに、その努力には恐れ入るというほかありまsねn
さらに、ファッションセンターしまむらは、物流についても自社内で行うという画期的なことを試みます。物流といえば、アパレル専門店からすると、まさしく畑違いの分野。しかし、外部の物流業者に委託する経費を削減し、消費者に少しでも安い商品を提供しようと、しまむらの社員たちはアイデアを出しながらそれも具現化してしまったのでした。しまむらは、数十台の大型トラックを購入。さらに、しまむら専属のトラック運転手も採用しました。そして全国に数箇所あるの物流センターと全国1000店舗以上あるファションセンターしまむらに、独自の流通ルートを築きたげてしまったのです。
結果的に、この自社内で物流システムをつくるというアイデアも大成功を収めました。安い値段で商品を発送することができるようになったのです さらに、ハンガーに衣類を掛けたまま運ぶなど、独自の工夫を加えることで、ファッションセンターしまむらの従業員たちの負担軽減にも一役買ったのでした。
本来、問屋や物流業者に委託して発生するはずの経費をカットできたことで、ファッションセンターしまむらは 消費者に低価格で商品を提供することに成功したのでした。仕入れから販売まで自社内で完結する基盤を築いたファッションセンターしまむらは、他のアパレル専門店をごぼう抜きし、現在も着実に成長を遂げています。