ユニクロとファッションセンターしまむらは、都市部に行けば、同じファッションモールに入っていたり近隣に店舗を構えていることがよくあり、私自身、比較のためにも、ユニクロとファッションセンターしまむらの2店舗とも入店することがしばしばあります。
そしてユニクロとファッションセンターしまむらの両方に入店してみると、ユニクロは個性的でファッションセンターしまむらには個性がないと感じる面は確かにあります。たとえば、それぞれが売ろうと力を入れている商品のラインナップです。しかし、それはよくよく見ていくと、両者にはまた違った個性があるということに気づかされます。
まずユニクロですが、新商品や売れ筋商品は、大量の商品が準備されずらりと陳列されています。そして、それぞれに目立つPOPが掲げられ、消費者にその商品の魅力を伝えたいという思いがひしひし伝わってきます。またそこでは、「今年のファッションはこれだ!」というように、今年の流行もユニクロがつくっていこうという自信も伝わってきます。実際のところ、ユニクロでは、世界のトレンドを研究し尽くした専属デザーナーが商品を開発しており、店員たちは自信をもってその新商品を売り出しているという背景があります。
ユニクロの店舗に入店すると、もちろん消費者は、自分の好みや予算にあわせてどの商品を買うかを選択するわけです。ただ、派手なPOPを掲げているユニクロ一押しの商品にどうしても目が留まるわけです。そして、「それだけユニクロさんが勧めているなら間違いない」という風に考え、その一押し商品をレジに持っていくわけです。そこでは、自発的に買い物をしていながらも、ユニクロの主張に共感し受身的な気持ちからも買い物に至る行動があるのです。
一方、ファッションセンターしまむらというと、店舗に入ると、まず感じるのは、「なんか地味だな」と印象かもしれません。というのは、ワゴンなどでセール商品を集めているものの、売れ筋商品や新商品を大々的にアピールするコーナーといったものが見当たらないのです。また、POPはところどころ掲げられているものの、ユニクロのような商品の良さを伝える趣旨の派手なPOPはほぼありません。しかも、布団カバー、靴、靴下、おもちゃ、インテリアといった、衣類以外の商品も陳列してあったりしますし、店舗のなかを歩けば歩くほど、ファッションセンターしまむらは、一体何を売りたいのか?と分からなくなってくることでしょう。
それもそのはず。ファッションセンターしまむらは、基本的に自社で商品を開発するということがほとんどなく、商品の多くは500ヶ所に及ぶメーカーから仕入れてきているのです。つまり、ファッションセンターしまむらには、おすすめの商品や、売りたい商品といったものが基本的にはないのです。
その点を考えたとき、確かにファッションセンターしまむらは個性が乏しいといえるかもしれません。しかし、じっくりとファッションセンターしまむらの店舗に陳列されている商品を見ていくと、この一見個性がないことが、非常に個性的であることがわかってくるのです。
というのは、ユニクロが、少アイテムを大量に品揃えしているのに対し、ファッションセンターしまむらに陳列してある商品は種類は、ユニクロと比べ物にないくらい多いのです。布団カバーや靴下などを除くと、しまむらの店舗には同じ商品は2〜3点しかなく、その代わり、商品の種類は店舗によっては数万種類にも及ぶほどなのです。
ファッションセンスの高い衣類から、こんなの誰が着るんだ?というダサい衣類まで、ファッションセンターしまむらはとにかく商品の種類が豊富。しかも、各店舗によってそういった商品のラインナップはそれぞれ違っているのですから、ファッションセンターしまむらの店舗をいくつかハシゴしたら、無数のアイテムから商品を選ぶことが可能ということになります。
そんなファッションセンターしまむらの店舗に足を運ぶと、消費者は、数多くある種類のなかからお好みの衣類を一から探し出すという作業を行うということになります。それは、何を買っていいか分からないという迷いも生み出すわけですが、消費者はまるでバイヤーになったような気持ちになり、お宝を探す感覚を味わえるのです。
今やライバルと称され、しばしば比較の対象となるユニクロとしまむら。いずれも衣類専門店というカテゴリーは同じですし、良い商品をリーズナブルな価格で消費者に提供したいという思いは共通しています。しかし、商品に対する考え方はじめ、2社はまさに対照的です。そんなこともあり、消費者からすると、ユニクロ派としまむら派で好みがはっきりと分かれるかもしれません。日本のアパレル専門店の業界をリードするユニクロとしまむら。今後も切磋琢磨し合って、お互いの長所を伸ばしていって欲しいと思います。