たとえば、結婚した女性は、結婚前の職場になかなか復帰できないという現状があります。というのは、子供が産まれると、家族の食事をつくったり、掃除・洗濯をしたり、保育園に子供を送り迎えをしたりするなど・・職場以外でのやるべきことが増え、仕事に時間を割くことがなかなか難しくなるからです。
しかし日本企業の多くは、結婚後に子育てと仕事を両立しようとする女性にはまだまだシビアです。というのは、同じ賃金を支払う以上、女性も男性と同じようなフルタイムの働き方をすべきという考え方の会社が多いのです。またそこでは、残業をしないと仕事が終わらないときは、男性社員だけではなく、子育てをする女性社員も例外なく残業するべきだという暗黙の了解があるのです。
結局、仕事を育児を主婦は、資格をたくさん持っていたり、高い能力があったりするような有能な人材であっても、職場を離れざるを得なくなり、家庭にとどまってしまっているという現状があるのです。
ただ、そういった主婦のなかには、子供が大きくなり手が離れたゆえに再び働くことを希望している主婦や、フルタイムでは働けず、育児や家事の都合を考慮してくれるなら働きたいと考えている主婦が多くいるというのが現状です。
そんな有能な主婦が家庭に数多く埋もれてしまっていることに、しまむらは目をつけました。そして、働くことを希望している有能な主婦たちに活躍の場を与えようとしました。その試みのひとつとして、ファッションセンターしまむらが始めたのが1986年よりスタートしたM社員制度です。
しまむらのM社員とは、パート社員という肩書きではありながら、しまむらの正社員に準じる高待遇の従業員。その待遇は、店舗によって微妙に差異はあるものの、賃金は、その地域におけるほぼ最高の水準に設定。さらにボーナスが月給の2ヶ月分支給、退職金制度ありなど良い条件が揃っています。また、本来は新卒で入社した正社員のみがなれるはずの店長職には、M社員のなかから積極的に登用するようにしました。それだけに、ファッションセンターしまむらでM社員の募集が行われるときは、採用人数の数十倍もの応募者が集まるのだそうです。
M社員には給料面以外にもさまざまなメリットがあります。家庭と仕事を両立することを前提に採用されているだけに、たとえば子供の参観日や運動会など特別な日には、繁忙期であっても休暇をもらえないか相談できるのです。その希望が叶うかは場合によりけりでしょうが、多くの場合、親身にその希望に対応してもらえるのだそうです。
また、ファッションセンターしまむらは、基本的に残業というものがありません。これは他の日本企業と大きく異なっている点だと思います。ファッションセンターしまむらでは、その日に終わらせるべき仕事は、マニュアルによって細かく仕事が振り分けられているそうです。ゆえに、よほどのことがない限り、閉店までにすべき仕事は片付いてしまうようになっているのです。
ですから、19時に閉店するしまむらの店舗ですと、従業員は、よほどのことがない限り、19:15で退社できるということになります。つまり、M社員たちは、その退社時間から計算して、家事の予定を立て、家族とゆったりと団欒のひとときを楽しむ予定も立てられるわけです。
主婦たちの力を高く評価し、家庭と仕事との両立を前提に主婦たちをM社員に採用しているファッションセンターしまむら。しまむらのM社員たちはモチベーションや能力が軒並み高く、それがファッションセンターしまむらの成長における大きな原動力のひとつになっていることは言うまでもありません。